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「遺言よりも不動産登記が優先」を解説します〜すぎさんの業務日誌

【20191030 すぎさんの業務日誌】

 

株式会社PSE資産プランニング 相続コンサルタントの"すぎさん"こと、杉森真哉です。

一般社団法人NIPPON終活サポートセンターの理事もしています。

 

すぎさんの業務日誌では、私がどんな仕事を日頃やっているのかをシェアしています。

 

今日は前日にアップした「すばるプロフェッションズEYE」で話をした

「自宅の相続、崩れた遺言優先、不動産登記が優先」について解説します。

 

これは今回の民法改正で、「不動産の相続において、法定相続分を超える分については、登記をしないと第三者に権利を主張できない」という論点です。

 

私もなぜこんなことが起こるのか、よく分かりませんでした。

遺言を優先するのが当然で、優先させないと相続人が不利益を受けるからおかしいと思っていました。

 

 

しかし今回対談した紅谷さんに丁寧に教えていただいて、相続や登記の原理原則を学ぶことが出来ました。

 

この情報は実は動画撮影をする前に、打合せでどんなテーマで話をするのかやりとりしていた時に、話した内容です。

 

かなりガッツリと1時間ぐらい話をしたので、当然10分程度の動画で収められるものではなく、動画には反映されていません。申し訳ありません。

 

でもせっかくなので、文面ですが解説して

それを皆様にも共有したいと思います。

 

 

<今回の条件>

子供のいない夫婦で、夫が「自宅は全て妻に相続させる」という遺言を書いたケースです。夫には、兄が1人いるとします。

⇒これは日経新聞にも掲載されていた事例です。

 

 

<考え方>

原則として、夫が亡くなった時点で、すべての財産は法律上の相続割合(妻3/4、夫の兄1/4)で共有状態になります。

ここが大切です。

 

 

もし法律上の相続割合で分割する場合には、遺産分割協議書は不要ということでした。

当然ですが、預貯金で無い限り、1円単位で分けることは不可能ですから、遺言か遺産分割協議を最終的に分け方が決まるという訳です。

 

 

もし遺言がある場合には、後から相続割合を妻全てに相続日に遡って変更する訳です。

 

無い場合には、遺産分割協議によって合意した内容に相続割合を相続日に遡って変更することになります。

 

 

 

そのため、相続割合の変更前の状態では、夫の兄1/4の権利を持っています。

 

この時点で、1/4の権利を第三者Cさんに売却し、登記を完了させたとします。

 

登記には公信力ありません。

「公信力ありません」というのは、登記を持っている人が絶対的に所有者という訳ではないということです。

 

実際の権利の移動は、当事者間の契約書や不動産の引き渡しがあれば、成立します。

 

 

でも、それを知らない外部の第三者は、困りますよね。

だから、第三者との関係では登記がある人が所有者として権利者になります。

 

なぜなら何も事情を知らずに共有分を購入した第三者を保護する必要があるからです。

 

 

 

逆説的にいうと、遺言がありながら登記をしなかった妻と何も知らずに共有分を購入して登記を完了したCさんを比較した際には、Cさんを保護する必要があります。

 

遺言があったのなら、登記を完了する必要があるよね。

でもやらなかったから、知らずに登記をしたCさんを優先させる必要があるよねという考え方です。

 

これは通常の不動産売買と同様で、第三者との関係では登記をもっている人が優先します。

 

 

 

だから3/4の法定相続割合については、相続が発生した時点で妻になるので、その権利を侵害することは出来ません。

しかし残り1/4については、妻の兄の持分になるので、それを遺言によって正すのであれば、遺言の執行が必要となる訳です。

 

 

<言い方をかえると>

新聞記事の書き方のように

「法定相続分を超える分(つまり1/4の夫の兄の持分)については、登記を完了させたCさんの権利のほうが優先される。」

ということです。

 

「法定相続分を超える分」という言い方も、余計わかりづらくしていますよね。

 

私も勉強になりました。

でも動画で紅谷さんが仰っていたように、専門家にはそんなリスクがあることは予測できます。

 

だからあえて争いを生じさせるようなことをすることは、いくらお客様の要望だとしても専門家としての対応はどうなの?

というのが動画の結論でした。

 

色々な利害関係がありますから、もしかしたらこんなことも起こりうるのかもしれません。

 

 

※私も勉強して学んだことを、私独自に解釈して記載した記事なので、解釈が違っている恐れもあります。

もし正式な根拠を必要とされる場合には、きちんと弁護士、司法書士、行政書士の先生に教えてもらってくださいね。

それを承知含みで、ご理解願います。